国民の医療費は年々増加し続け、深刻化していますが、そのなかでも特にムダ使いだと問題視されているのが、高齢者が飲み残したり飲み忘れたりすることによって服用されなかった「残薬」です。

厚生労働省の発表によると、国民の医療費は2007年度より6年連続で過去最高を更新。2012年度は39兆2117億円にまで膨らんでいます。

高齢者の多くは病気を併発していて、複数の病院に通っているもの。それぞれの病院で処方された薬を合わせると、1回に10種類以上の薬を飲む人も少なくありません。

認知能力が低下した高齢者が複数の薬を管理するのは難しいこ と。何をどう服用するのかがわからなくなってしまい、結果飲まなかったり、1日3回食後に服用と指示されると食事を1食しかとらなかった場合は薬も1回し か服用しなかったり、自己診断で今日は体調が良いので薬を飲まなかったなどの理由で、残薬の量は徐々に増えていきます。

また、高齢による摂食・嚥下機能の低下により、錠剤やカプセル、粉薬が飲みづらくなることも飲まない理由のひとつです。

薬の飲み残しや飲み忘れは、薬の管理が患者任せになっていることが大きな理由。たとえ医師や薬剤師が患者に薬の服用の状況をたずねても、「薬を飲んでいない」とは、特に高齢者は正直には言えません。患者の言葉をうのみにするまま薬を処方し続け、結果、大量の残薬につながってしまったケースが多数報告されています。

ひとり暮らしの高齢者であれば、薬の管理はさらに難しいものに。さらに、認知症の症状があると事態は深刻です。医師や薬剤師がきちんとチェックしないと、別の医療機関で処方された重複する薬があることも少なくありません。

では、実際に残薬を減らすためには、どうすれば良いでしょうか?それには患者と医療関係者とのきめ細やかな連携が必要となります。そのためには、薬剤師の存在が重要になると期待されています。

残薬を減らすための国の取り組みもはじまっています。厚生労働省は、「かかりつけ薬局」制度を来春から導入する方針を明らかにしました。

新制度は、薬剤師が患者の薬や体質などの情報を一元的に管理し、患者宅を訪ねて残薬や副作用などがないかを確認し、医師に報告したり、処方の変更を提案することで、重複処方や残薬をなくそうというプランです。

厚生労働省は在宅医療を推進するため、医療機関に加え、薬局にもその役割を担うことを期待しており、すでに一部の薬局では高齢者宅の在宅訪問や24時間体制の調剤・服薬指導が始まっています。

また、政府が導入を進めているマイナンバー制度では、医療機関の受診歴等も確認できるようにする方針です。個々の患者の情報を一元化し、重複した診療や処方薬の大量投与を防ごうというもので、2020年の本格的な運用を目指しています。

世界一の長寿国という、本来は誇るべきはずの日本の優れた医療や食生活によってなし得た成果が次世代の重荷にならないように、高齢者が安心して生活できる政策の実現に期待したいものです。

在宅で暮らしている高齢者には、病院で服薬管理担当者に服薬の飲み忘れがないか巡回してもらうことで飲み忘れや飲み残しが軽減されると思いました。

小笠原

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